中国-China-

2004年6月5日から15日にかけて、私はひょんなきっかけから、
大親友のまなっぺと共にバックパック1つで中国を旅する事になった。

この旅立ちの日までにも、私たちはたくさんのハプニングにぶつかりまくってきた経緯があるので、
まずはそこからスタートしようと思う。

1.なぜこの時期、なぜ中国
そもそも、6月なんていうのは、大学の真っ最中であり、本当ならば旅行なんてしてられないはず。
ところが私、新学期早々に素晴らしい発見をしたんです。

――― 6月に、体育祭を挟んで10連休が出来る ―――

私は大学の行事というのに非協力的で、体育祭も、学校祭も、参加した試しがない。
「この10連休、黙ってバイトするにはもったいない…」

そして私が思いついたのが旅行。行き先はタイ

というのは、4月に友人とパックツアーでタイを訪れ、すっかり魅せられてしまっていたのだ。
さて、誰と行こう。さすがに1人で行く勇気はないし…。
そこで私は、春に東南アジアを周遊した旅の先輩であるまなっぺに声をかけた。
「6月にさぁ、地味に10連休とか出来るんだけど、 一緒にどっか(ってかタイ)行かない?」

と、こんな安直な私の提案から、私達は連休を利用してタイへ行く方向で話が始まった。

…タイ?
…中国は?

そう、この時点では中国なんてのは中の字も出てこないくらい、全然考えもしていなかった…。


同じ英文科で同じゼミ、同じ苫小牧人なのに全く時間の合わない私達は、 予定日まで1ヶ月を切っても全く話が進んでおらず、
インターネットのオンラインチャットを使って、「旅会議」をする事にした。
情報化社会、文明の利器パソコン、バンザイ。

5月15日のオンライン会議。
「わーーーーーーーーーーーーー!」
その日の会議はまなっぺの絶叫から始まった。
「どうしたの?!」
興奮するまなっぺから事情を聞いて、私も絶叫。
まなっぺ、とあるサイトの懸賞に応募し、ナント無料航空券をゲットしたというのだ。
行き先はベトナム中国

…じゃ、ベトナムに行こうか。

これが私の率直な意見である。
そもそもタイに行こうと言っていたし、 まぁベトナムもタイもそんな変わらんべ。

まなっぺの当てた航空券はお一人様分。もちろん私は実費です
「ベトナム行きの航空券っていくらするんだろう〜?」
…これが、いくらだったか忘れてしまったのだが、ちょっとお高かったことだけ覚えている。
航空券事情に詳しいまなっぺも 「これは高い!安い時狙えば全然安く行けるのに、 この値段を払うのはもったいない」というご意見を頂いた。

「じゃあ中国行かない?」
2つの選択肢の中でベトナムが高い。じゃあ中国にしよう。自然な流れである。

…中国…。

「中国は、タイとかと比べると全体的に航空券は高いんだけど、 でも年間を通じてベトナムみたいな差はないし、
なかなか中国行く機会ってないと思うんだよね!」


…中国…。

四千年の歴史。
自転車。
10億人。
一人っ子政策。
毛沢東。
あ、金正日?
……。

結局その日のオンライン会議は、「本当に懸賞って当たる人いるんだね!」 という興奮と感動が冷めず、
どこに行くのか決まらないままに終了した。

それから数日間、私も色々考えたのだが、なかなか中国へ行くという踏ん切りがつかない。
ついにはまなっぺは中国、私はタイ、という別々の旅にする他ないか、という意見まで出た。

…中国。

タイとかベトナムって、今は日本からの旅行者も多いし結構メジャーだよな…。
でも中国ってどうだろう?こんな機会でもなければ行く事ってないんじゃないかな…。
タイだったら他の友達とでも行ける気がするけど…中国は…まなっぺ以外とは行けない気がする

…よし、これも何かの縁だ!

というわけで悩みに悩み抜いた結果、私はまなっぺに同行して中国に行く事を決めた。


2.航空券事件
5月26日、航空券を予約。出発が6月5日なのに、なんとものんびりした話だ。
予約の電話は、まなっぺにお願いした。

予約は無事に済み、あとは支払いのみ。
まなっぺは旅行会社からの支払いに関するメールを私のパソコンに転送してくれていた。
しかし私はあまりこまめにメールチェックをするタチではなく、それを知らずに過ごしていた。
そして予約から2日後の28日の夜、まなっぺからのメールに気づき、 その支払いについてのメールを読んだところ…
私はとんでもない事実に直面したのである。

28日の15時までに以下の振込先に全額をお支払い下さい。
もし時間までに振り込まれなかった場合は 自動的にキャンセルになりますのでご了承下さいませ。」

このメールを見た時間→28日20時過ぎ。15時って…もう過ぎましたけど?

…キャンセルされたのでしょうか…?

さらには、キャンセルにはキャンセル料3万円がかかることも発覚した。
知らぬ間にキャンセルされ、しかもキャンセル料3万を払うなんて、 こんなアホな話ない
もし明日予約を取り直したとしても、予算はプラス3万になる。
いや、まなっぺが予約の電話をしている最中に残席が6席から4席にリアルタイムで減っていたという話だったから、取り直せるとも限らない。

え、中国に行けない?!

急いで旅行会社に問い合わせをしてみたが、無常にも営業時間は終了しております〜♪という録音メッセージ。
動揺しまくった私は震える手でまなっぺに電話をかけた。するとまなっぺは、
「本人に確認の電話もしないで翌日までに振り込めなんて勝手過ぎない?!
仮にキャンセルになってたとしても、それは3万なんて払うことない!」

と力説し、さらには電話したのは私だから、と言って、翌日の問い合わせを買って出てくれたのである。
ネゴシエーター池淵、なんとも力強い味方である。


翌日、まなっぺが問い合わせをした上で私に電話をくれた。
結果、キャンセルはされていなかったことがわかった。 ホッとひと安心である。ひと安心どころではない。もう何百安心である。
本当に、脱力とはこういうことを言うのか、というほどフニャフニャになってしまった。
余談だが、出発間際に航空券を取り、振込みが翌日なのに気づかずキャンセル料を払うハメに、というのは初心者によくある失敗なのだそうだ。


こんなに苦労して航空券を手に入れ、あとは出発を待つのみだ。待ってろ、中国!


3.いよいよ出発 6月5日
7時30分、自宅を出る。ちなみに成田発上海行きの便は21時発
…何でこんな早い時間なのか。
いくら千歳から成田への移動があるとはいえ、朝7時半に家を出る必要があるのか。
…実は私たち、千歳から羽田への航空券を取っていなかったのである。
というのは予約を忘れていたのではなく、スカイメイトを狙っていたのだ。
土曜日だが満席ということはないだろう、と私たちは読んでいた。
実際数日前から毎日ホームページで空席状況を見ていたが、 どの時間帯でも30席以上の余裕がある「○」だったのだ。
しかし、出発前日になっていきなりその数が残席10〜29席の「△」に変わり、
狙っていた便に至っては満席の「×」になっているではないか!
せっかく成田から上海までの席を確保したのに、北海道から出られなかったのではシャレにならない。 いやマジで。
ならせめてこの時点で予約すればいいのだが、 ケチな私たちは最も安いスカイメイトにこだわっていた。
三千円足せば確実に買えるのに…。

話し合いの結果、朝早く空港に行けば、どっかの便にスカイメイトで乗れるだろう ということで、 朝7時半の出発になったのである。
今考えれば出発時間を前日に決めているあたりもどうかと思うけど…。
ちなみに空港までの送迎は、私の(元)彼、S氏が申し出てくれていた。
彼は前々から送ってあげる、と言ってくれていたのだが、 彼だってまさかこんな早朝の出発になるとは思っていなかっただろう。
普段遅番で深夜まで働いている彼は、起きれないことを懸念して、
なんと仕事をあがってからこの時間まで夜を徹して待っていてくれた。
お人好しの彼のことだから、いくら私が「朝早いから無理しないでいいよ」 と言ったところで
今更「じゃあ…」とは言えなかったのであろう。
申し訳ナイ
空港に到着し、私たちは9時千歳発の便をスカイメイトで手に入れた。
何はともあれ、無事北海道を出ることが出来たのである。

といっても早い。10時半には東京についてしまう。
どんなにのんびり行っても夜の21時まで時間を持て余すことは目に見えている。
「東京観光しようか。」
「いいね〜!」
というわけで急遽、東京観光決定。場所は機内会議の結果、浅草になった。
まなっぺは過去に1年東京に住んでいたことがあり、東京の移動手段他すべて彼女任せである。 本当に力強い
もし私ひとりなら、間違いなく成田でひからびていたであろう。
東京到着。電車に乗り、いざ浅草へ。
とりあえず、雷門の前で記念撮影。上野駅の写真も撮った。
普通に北海道からの観光客である。

(左)見送りの際妹が描いていた絵。(中)浅草の雷門。         (右)上野駅。

…暑い。
6月とはいえ、道産子にとって東京の初夏はすでに堪える。
バックパックを背負っていることもあり、2人とも汗タラタラである。
浅草観光の後、私たちは上野公園へ向かい、公園の日陰に腰をおろして昼ごはんを食べた。
「さて、中国、どこ回ろうか。」
そう、私たち、実は中国でどこに行くか、全く決めていなかったのだ
話し合う時間がなかったこともそうだが、
まなっぺからの「あまり予定をしっかり決めないほうが楽しい」という意見もあり、
決まっていたのは行きと帰りが上海の空港から、というそれだけであった。
私はまだ旅のビギナーで、無計画の旅なんぞしたことがなかったので、
出発数日前にはあまりの無計画っぷりにエキサイティングを通り越して ナーバスになっていたのだが、
ここはもうまなっぺを信じるほかなかった。
しかし、さすがにそろそろ今晩どう過ごすかくらいは決めたい。
初めて中国のガイドブックを開く。
「…中国広いなぁ…」
知ってるつもりだったが、中国、本当に広い
そして名前をよく聞くメジャーな場所の上海・北京・西安は 見事に中国全土にきれいなトライアングルを描く散らばり具合だったのである。
「困ったね…」 「ね…」

結局大して何も決まらないまま時間は過ぎ、空港へ。そして離陸。
飛行機の中で、改めてガイドブックを開く。
もうこの飛行機が着いた時点で私たちは予定がナイ。今晩、どうする…?
冷静に考えてみると、飛行機が到着する時間は現地の夜23時過ぎだ。
そんな時間から外に出て大丈夫なんだろうか。
お互い口には出さなかったが、「多分、空港泊カナ…?」 そんな気配がした。

そしてついに上海に着陸。入国審査を終え、空港ロビーに出てみる。
…なんか閑散としている。人もあまりいないし静かだし。店は閉まっているし両替も閉まっている。
私たちの手持ち金はUSドルと日本円だ。両替しなきゃタクシーも乗れないイコール外に出れない。 ってことは…
やっぱり空港泊☆ 
人の少ないロビーの端を選び、ベンチを寝床にする。
歯磨きも終え、まなっぺ持参のマレーシアのサロンを布団代わりにして就寝。
…この空港、ロビーをチャリに乗った係員が走っている。さすが中国
しかし寝る身としては、落ち着かない。 なんとなく人相のよくないこのチャリ集団に襲われたらどうしよう…。

そんな不安を抱きつつ、やっと眠りについた矢先、トントン、と体をたたかれ、起こされた。
目を開けると、そこには警備員のようなおじさんが立っていた。
中国語で何か言っているが全くわからず、焦ってまなっぺを起こす。
どうやらこのおじさんは「パスポートを見せろ」と言っているらしい。
見せるとおじさんは私たちのパスポート番号を紙に控えている
え、なんだろう、空港で寝るのって違法なんだろうか… まさか強制送還…?
私の不安をよそに、おじさんは何やら向こうを指さしている。場所を移れということらしい。
連れられるがままにそこに行くと、同じようにベンチがあり、そこでは何人かが私たちと同じように寝ていた。
どうやらここの方が安全とかまとめて寝ろとか何かそんなようなことを言っているようだ。
強制送還ではないらしい。よかった…。


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